「信用のプロトコル」ブロックチェーンが富の再分配を可能にする5つの方法

各国の政治指導者や企業の経営者などが集まる、世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」が1月17日から20日までスイスで開催されました。

世界の富は、上位8人と下位50%が同じだと言われ、格差社会が進んでいます。リーダーは共通目的として、格差縮小を掲げていますが、問題は深刻化する一方です。今年のダボスでも、Brexitやトランプ大統領の誕生など、リーダー、特にCEOへの信頼が落ちている事が、大きなテーマになっているようです。


現在は、課税を通じて社会に分配する形で、富の再分配行われてます。しかし、「信用のプロトコル」であるブロックチェーン技術を活用すれば、富をあらかじめ分配したり、生成の仕方を変える事が可能です。ブロックチェーン・レボリューションの著者でもあるDon Tapscott氏は、富の再分配の解決策として、TEDで5つの方法を紹介しています。





1.Protectihg rights through immutable records:不変レコードによる権利の保護
2.Creating a true sharing economy:真の共有経済を創造する
3.Ending the remittance rip-off :法外な送金の終了
4.Enabling citiizens to own and monetize their data:市民がデータを所有して収益を得ることを可能にする
5.Ensuring compensation for the creators of value:価値創造者の報酬の補償

How the blockchain is changing money and business | Don Tapscott:日本語字幕付き「TED」(2016.9.16)
 

1.未登録の不動産情報の登録
世界の約70%は、貧弱な権利しか持たない土地となっています。ラテンアメリカの経済学者エルナンド・デ・ソトによれば、この問題は銀行口座の所有よりも、経済的流動性の点で重要であるとしています。自分の土地に正当な権利を持たなければ、それを担保に借り入れも行えず、将来の計画を立てる事が出来ません。ホンジャラス政府と進めているFactomや、スウェーデンのChromaWay、日本で注目されているNEMを活用したLandsteadなど、最近ブロックチェーンを活用した不動産登記プロジェクトが増えつつあります。土地登録において最も重要な事は、ブロックチェーンの技術だけでなく、政府と協力し、市民自らの手で正確な測量を行う事です。先進国で既に整備されている情報をブロックチェーンに載せるよりも、未整備の発展途上国のプロジェクトこそ価値があると私が考える理由です。Bitlandは昨年1年間で、ガーナだけで500件の土地情報を登録したようです。このプロジェクトは、ナイジェリア、ケニア、ボツワナ、モーリシャス、南アフリカに拡大しています。

「21世紀はアフリカの時代」安倍首相もTICADでナイロビ宣言 Netexplo賞のBitlandとは?「暗号通貨革命」(2016.11.7)

2.分散型シェアリングエコノミー
UberやAirbnbなど、シェアリングエコノミーという新語を生んだスタートアップは、数百億ドル規模のユニコーン企業に育っています。しかし、これがDACやDAOのような分散型組織に代わるとしたら、どのような世界が訪れるのでしょうか。日本の食べログの点数操作疑惑も、改ざんが困難なブロックチェーン技術を活用すれば、透明性を一層確保出来ます。法整備などの問題が残るものの、Ethereum上のプロジェクトなどが、将来現在のIT企業が提供するサービスに取って変わる事が予想されます。現在、分散型組織の課題に関心を持つ私は、Ethereumより一歩先に進んでいる、Bitshares界隈のプロジェクトに注目しています。

イーサリアム(Ethereum)とリップル(Ripple)に関する私的見解「暗号通貨革命」(2016.5.7)
3.国際送金
日本人にはあまり知られていませんが、外国人出稼ぎ労働者における、母国への送金問題は深刻です。着金には7~4日を要し、手数料は10%程度かかります。せっかく労働で得た対価が、中間業者によって搾取されているのです。もともとケニアでスタートしたM-PESAも、出稼ぎ労働者のニーズから生まれています。銀行によるRippleを活用した海外送金が、いよいよ4月以降に開始されます。Rippleが普及すれば、銀行における手数料問題を一気に解決出来ます。出稼ぎ先から、母国への送金の際に生じる問題の解決に、一役買う事は間違いありません。
国際送金シェア16%に達する暗号通貨に投資せよ「暗号通貨革命」(2015.5.8)
4.アバターによるパーソナルデータの収益化
デジタル時代における最も重要な資産はデータです。近い将来訪れるAIやIoT社会では、一層重要な役割を担う事が予想されます。データは私達人間や活動履歴から生まれます。今後はセンサーやGPSによって行動履歴までデータ化されます。マイクロチップが体内に入る未来では、DNA情報までデータ化されるかも知れません。インターネット上の行動ターゲティング広告など、データはあなたの気づかないうちに、社会に価値を与えています。TwitterやFacebookなど、SNS上の発言も、株式市場の投資判断から企業の商品開発まで幅広く利用されます。それらのデータをマネタイズする事が出来たらどんなに素晴らしい事でしょうか。少しイメージ出来ないかもしれませんが、ポイントサイトにおける行動データには、広告費用の一部があなたに還元されます。クレジットヒストリーによるクレジットスコアは、過去の行動履歴から産まれる価値の源泉だと言って良いでしょう。あなたの行動履歴が、改竄困難なブロックチェーンに刻み込まれ、アバターが勝手にマネタイズしてくれる未来が訪れれば、きっと格差社会は改善されるに違いありません。
ポイントサイト「モッピー」たった1日で、人生はもっとハッピーになれるのか?「暗号通貨革命」(2015.9.21)
5.クリエイターによる著作権管理
インターネットが登場して以降、ユーチューブなどにおける違法コピーや違法ダウンロードなど、クリエイターへの報酬が激減しています。しかし、改竄が困難なブロックチェーンを活用すれば、第三者を必要とせず、自らが著作権の管理、マーケティング、スマートコントラクトを活用した販売が行えます。モノのインターネット化が進めば、車や野外ディスプレー、プロジェクションマッピング、3D(プリンター)、VRなど、一層幅広いシーンで活躍が期待出来ます。音楽、アート、動画などに留まらず、発明者、ジャーナリストなど、あらゆる業界のクリエイターは、自分自身の著作権を管理し、P2Pで顧客とダイレクトにやり取りが可能になります。
次のSteemを探せ! ピアトラックス「ミューズ」で音楽業界に革命を起こし、秋葉原の地下アイドルを発掘せよ「暗号通貨革命」(2016.7.15)