去る生徒
生徒を眺める。生徒は友達と遊び、勉強をする。友達とワイワイ遊ぶ。ケラケラと笑う。そして勉強をする。
何気ない日常だが、そんな学校にも一つだけ空白の席がある。誰もその生徒の事は気に掛けない。
生徒にこう質問した。「彼女はいつから来ないの?」生徒はこう答えた。「分からない。小学校の時からきていない。」私は答えた。「そうか。」と。
学校を深く観察する。そうすると、やはり一部の生徒は何かこらえている。目に見えない何かにこらえている。
しかしながら、観察すれば、逆に生徒からも観察される。「あの人はおかしい先生だと。」
だからしばらくは黙っていた。
しかし今思う。学校という場も一部の犠牲者がいるからこそ、成り立つものだと。
今新しく新入生が入る。みんなワイワイしているだろう。その生徒から何人の生徒が犠牲になるのか。考えるとぞっとする。しかし、助け舟は来ない。来たとしてもそれは船ではなく、牢屋だ。
そういう少数派の生徒には気づいてほしい。自分の意志で道を切り開かなければ何もない。どんなに不合理だろうが、非人情だろうが、戦わなくてはいけない。個人では優しいが、集団は笑顔で殺してくる。
自分はそういう生徒と話したとき、こう言うのが限界だった。教師としてはこうすることが望ましい。しかし私という個人としてはこうであってもいい。
空白の席があった。そして近くの線路では、自殺者もでた。自分にはわかる。しかし彼らには分からない。彼らは無言の殺人者だと言う事を自分は知っている。
とはいえ、大衆は笑顔ならまだいい。しかし、大衆が狂気化したらどうだろうか?その時はおそらく笑顔で殺す相手がいない時であろう。