三菱UFJ、みずほ、SBIも仮想通貨を発行する!ラップでケインズVSハイエクを学ぼう
UBSやシティーバンクだけでなく、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、SBIホールディングスなど、日本の金融機関も続々と仮想通貨の発行を表明しています。SBIバーチャル・カレンシーズが提供する取引所では、各種仮想通貨だけでなく、現金、ポイント、ゴールド、地域通貨などの取り扱いを行う予定だと言います。
日本経済新聞でも、『約40年前、経済学者ハイエクは「貨幣の脱国営化論」で「多様な通貨が競争し合う状態こそ健全」と指摘した。その予言がいま、現実のものになりつつある。』と紹介されています。いよいよ日本にも、本格的な多通貨競争「価値のインターネット(IoV)」の世界がやって来ます。
米国のMITの所長伊藤穣一氏によれば、1930年代に根本的に銀行のシステムを変えようという議論があった。当時は技術的に不可能であったものが、現在はテクノロジーによって可能になった。昔の経済学的な理論に再び挑戦しようとしている学者達が結構いると言います。
恐らくこの議論は、1929年に起こった世界恐慌の引き金となるウォール街大暴落がきっかけだと推測出来ます。今後のグローバル経済の行方は、当時どのような議論がされていたかを調べれば、自ずとヒントが見つかりそうです。
ウィキペディアでハイエクに関して調べると、1920年~40年代に社会主義経済の実行可能性を巡る「経済計算論争」に、積極的に参加していたようです。これは「生産手段の私有を認めない社会主義経済の下で、いかに生産財に価格を付け、効率的な資源配分を行うか」といった論争です。
当時は膨大な経済主体から、私的情報を含めたデータ収集は、絶対に不可能であると思われていたようです。しかし現在では、AI、ビックデータ、IoT、ブロックチェーンなどテクノロジーの進化により、一般均衡理論の枠組みに則った、リアルタイム性の高いシャドウ・プライス(潜在的な交換可能性による価格)の決定や、トークンの付与などによるインセンティブによって、私的情報の収集も実現可能になったと言えます。日本政府は、現在「情報銀行」の創設に動いています。
このようなテクノロジーの変化が、現在の意欲的な経済学者達を再び動かしている要因ではないかと思われます。
(6)ビットコインVS銀行 22世紀のカタチ そこに「日本経済新聞」(2017.1.7)
2004年に考案されたRippleは、ハイエクの予測を遥かに超える「電子計算機」
Rippleにも、アメリカの経済学者にとってハイエクが受賞したノーベル経済学賞よりも難しいとされる、ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞した経済学者、Susan Atheyがアドバイザーとして参加しています。
ハイエクは、テクノロジーが多通貨モデルを一層効率的なものにするとし、全ての通貨における等価値を、最新の為替レートで数秒ではじき出す、『電子計算機』の登場を予測しました。グローバル通貨に留まらず、ILPを通じてあらゆる価値の交換を可能にするRippleは、世界初のマネーの為のユニバーサル・トランスレーターです。Rippleこそ、ハイエクが予測した『電子計算機』をイメージして、開発されたものに違いありません。
IoTは、モノにセンターを付ける事によって経済主体からビックデータを収集出来ます。ILPが異なるブロックチェーンに繋ながれば、ビックデータは更に進化を遂げます。サードパーティは改竄が困難なブロックチェーンに刻まれたビックデータを使い、統計学とAIによってシャドウ・プライスの計算が行えます。つまりRippleは、ハイエクの予測を遥かに超える『電子計算機』として機能するのです。
今後の金融の世界では、AI、ビックデータ、IoTを駆使した、超高速アルゴリズム取引を行うモンスターのようなファンドが現れるだろと予想されています。トランプ政権に強いつながりを持つ「吸血イカ」と評されるゴールドマン・サックスは、既に人工知能によって自動化され、トレーダーは600人から2人になっているそうです。これでは、まるで「ロボットイカ」です。
近い将来、リーマンショックという金融危機の発端となった複雑なCDSも、適切なデューディリジェンスが行えるようになるに違いありません。価値のインターネットの世界で、カウンターパーティリスクの無い、高速電子計算機とバランスシートの監査をサポートするRippeは、自動化された会計システム時代において、必要不可欠な存在になると思われます。
Corporate Disbursements(法人向け融資)「Ripple」(2016.12.9)
ラップで経済学を学ぶ ケインズVSハイエク
ところでハイエクの「貨幣発行自由化論」を中心とした理論とは、一体どんなものなのでしょうか。一般に大きな政府(政府の介入)のケインズ、小さな政府(市場の自立)のハイエクと呼ばれていますが、経済学を学んでいない人には少し難しそうです。
しかし、ユーチューブには、景気循環を巡る論争を繰り広げたジョン・メイナード・ケインズ(1883年~1946年)と、フリードリヒ・ハイエク(1899年~1992年)の政策の違いについて、ラップで分かりやすく学べる動画があります。
動画では、世界経済サミットが行われるホテルに、ケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」が聖書のように常備されています。Fed(米国連邦準備銀行)では、ケインズの国民所得恒等式「C(所得)+I(消費)+G(投資)=Y(国民所得)」を基に、連日金融緩和パーティーが行われます。
しかし、長期間ゼロ%に近い低金利政策が続くと、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失う「流動性の罠」に陥ります。ハイエクは、意図的操作で発生したバブル経済の後には、二日酔いのような深刻な経済不況がやって来る事を批判し、市場に自由競争を求めました。
しかし、バーテンダーに扮した元FRBベン・バーナンキ議長と、元NY連銀総裁のティモシー・ガイトナーの2人が、それでもお構いなしに量的緩和という名の大量の酒を飲ませます。このような現在の経済政策を、ハイエク後年の大作のタイトル「致命的な思いあがり」で締めくくっています。
ケインズvsハイエク(2010.1.30)
ケインズvsハイエク 第2ラウンド(2011.5.3)
ゲゼルの思想ではケインズもハイエクも共存可能
一方、BISのレポート以降、イギリス、カナダ、オランダ、スウェーデン、中国、ロシア、韓国など、一部の中央銀行で、利下げの限界を打破するため仮想通貨の導入が研究されています。日銀レビューによれば、中央銀行がブロックチェーンやDLTを活用する議論の背景には、流通通貨のデジタル化だけでなく、中央銀行当座預金の管理方法も含まれると言います。その利点として「ユーザー利便性の向上」「金融政策の有効性の確保」「通貨発行益(シニョレッジ)、その他」の3点を挙げています。
中央銀行発行デジタル通貨について(海外における議論と実証実験)「日銀レビュー」(2016.11.17)
これらの動きは、過去にこのブログで取り上げた、シルビオ・ゲゼル(1862年~1930年)の自由通貨の世界と一致します。一見ハイエク寄りに映るゲゼルも、地域通貨には反対し、国家が責任を持って管理し、インフレもデフレもない通貨制度を理想としました。ブロックチェーンを活用すれば、減価する自由通貨「スタンプ貨幣」の実現は容易です。
あのケインズも、将来ゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろうと評しています。ゲゼルの思想の中では、ケインズとハイエクの精神の共存が可能です。
認知科学者(計算言語学・認知心理学・機能脳科学・離散数理科学・分析哲学)で、コンピューターサイエンスで有名なカーネギーメロン大学博士の苫米地氏は、ビットコインで代表される仮想通貨について『ハイエクの言う「自由通貨」になり得ない。界隈はハイエクを読んでいない。』と言います。
利害関係者以外の本を読んで自分の目で確かめよう
私達のような一般人は、専門家に扮した利害関係者の情報を鵜吞みにせず、自分の頭でしっかりと考えて判断した方が良さそうです。いずれにせよ、私もハイエクとゲゼルに関する本はほとんど読んでいないので、一度しっかりと読んで考察を深めるべきだと感じました。