トラストレスの社会は実現可能か? 〜信用の手口とトラストレスのポリシー〜

in #japanese7 years ago

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生命保険の営業を、やっていました。

相手を信用させる前例なき手口 コインチェック攻撃で明らかに | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180512/k10011436321000.html

今回は私が前々から思っていた、「トラストレス」について少し私見を述べてみます。

まず、トラストレスについて。サトシ・ナカモトはその論文の中で、

インターネットでの商取引は、ほぼ例外なく、電子取引を処理する信用できる第三者機関としての金融機関に頼っているのが現状である。大多数の取引においてはこのシステムで十分であるものの、信頼に基づくモデルであるがゆえの弱点は残っている。

必要なのは、信用ではなく暗号化された証明に基づく電子取引システムであり、これにより希望する二者が信用できる第三者機関を介さずに直接取引できるようになる。

引用元: http://www.kk-kernel.co.jp/qgis/HALTAK/FEBupload/nakamotosatoshi-paper.pdf

……と、本人はトラストレスという言葉を使っていないのですが、「"信用できる"第三者機関」を「システム化」し、「"信用できる"第三者機関」が仲介しなくてもいいようにしよう=トラスト(信用)レスと言う言葉が誕生しました。暗号通貨に興味がある方なら、どこかで聞いたことがあるかもしれません。

冒頭紹介したニュース、コインチェックのNEM(XEM)流出事件はセキュリティが甘かったところを突かれたのだと思っていましたが、周到に練られた、恐らくプロ組織の犯行のようで驚きました。
確かに、オフで会った事があり、SNS でも絡みが半年ほどある"知人以上友人未満"からのメールなら、確認せず"信用"して封を開けてしまいそうです。

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ところで、私は生命保険の営業を少しだけしていました。
元来セールスパーソンではなかったため、減給に伴い別職へ移りました。
そこで「セールスパーソンの手引き」を一通り習いました。かなり忘れていますが、売り方はこんな感じです。

  1. 商品知識や経済動向を常に最新のものにし、勉強を怠らない
  2. 顧客に、今加入している保険に疑問を持っていただき、不安を顕在化させる
  3. 不安に対する解決案を提示し、自分はこの手のプロだとアピールする
  4. 顧客の疑問や悩みに答えつつ最適な商品に導く
  5. 最終的に顧客は「自分の不安を解決してくれた人間」として信用してくれる

と、うろ覚えなのですが、結局プロセスは「いかに"信用"させるか」にかかっています。一人の顧客の信用を得ると、彼の周囲の人間からの信用を格段に得られやすくなります。

他業種の営業をやったことがないのでわかりませんが、恐らく「熱意を持って商材を紹介し、自分を売り込み信用させる」部分は共通しているのではないでしょうか。

私はこうも教えられました。
「お客様はプロではない。プロの我々がお客様を導きニーズを満たし、顕在化した不安を取り除くのだ。」

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話を戻すと、クリプト界隈をいろんな意味で震撼させた「ビットコネクト(ネズミ講で資金を集めた詐欺コイン・破綻済み)」も同じようなプロセスを得ていると思われます。
潜在的な「リッチになりたい、お金がなくて将来が不安」などのニーズをを巧みに捉え、煽り、導き、信用させ自分に投資させる。派手なトークで顧客を盛り上げいい気分にさせる。
彼は"信用"を得て、巨大な王国と富を作り上げました。
参考: https://jp.cointelegraph.com/news/investors-file-class-action-lawsuit-against-bitconnect-following-its-shutdown

クリプト界でさえ「トラストレス」という基礎概念が一般的にそこまで浸透しておらず、未だ"信用"を得たもの勝ちの社会なのが現状です。

また「"信用できる"第三者機関」に頼らないということは、「自分の資産は自分で守り抜く」ということです。セルフ GOX(自分のミスで暗号通貨をロストしてしまうこと)を引き起こした方は少なくないでしょう。自分の資産を守り抜く難しさを日々感じている方も多いかと思います。

そして根源的な問題。「信用できる第三者機関」にとって変わるシステムが本当にうまくワークするのか。
今の所ビットコインのブロックチェーンはうまくいっているように見えます。ただ、他のコインだとそのものの脆弱性を突かれたりもしています。

トラストレスを貫こうとすると、今まで金融機関が肩代わりしていた「金融知識の収集」や「資産を守る」ことなどを全て自分が行うこととなります。「セルフ GOX しないよう立ち回り、情報を自分自身で確かめ、熟考し決断する」ことが求められます。しかし、疲れている時、なんだか面倒な時、決断をついつい人に委ねてしまいませんか。ついつい後回しにしてしまいませんか。トラストレスの実行には、非常にタフな精神力が求められると思います。

一部の成功者はこの辺りのバランス感覚が優れており、投資家や企業の役員、CEO として活躍しているように見受けられますが、一般人には難しい話です。脳はどうしても易きに流れます。

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また、人はソーシャルな生き物です。
Steemit もソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ですが、その人の記事をどう upvote していますか? フォローが多いと全て読むのは中々厳しい時もあるかと思います。この人は SP が大きいからとりあえずよく読まずに upvote しておき、記事が伸びる「であろう」と「期待」したことはありませんか。それを否定するわけではありません。

似たシステムの ALIS でもみられた現象です。あらかじめ交流がある人にいいねをつける、(実験的な)セクシャルな画像のサムネイル記事にいいねが集まる。疲れた時、欲望にかられた時、効率を追求した時、また個人的な好感などから、人は易きに流れます。内容を判断するのではない、誰が言っているかで判断してしまう時も……いやそのほうが多いのかもしれません。
つまり、一般的に言われるインフルエンサーは"信用"されやすい、得られやすいということです。

もっと分かりやすい例を提示しましょう。
先日、インフルエンサーから bitFlyer に関しての意味深なツイートが出回り、界隈一部がこのツイートを疑ぐり、代表者が火消しのツイートをするという現象が見られました。
意味深ツイート: https://twitter.com/kirik/status/994220551823548421
界隈の一部: bitFlyer 廃業か?! お金引き上げよう!(豊川信用金庫事件?)
火消しツイート: https://twitter.com/YuzoKano/status/994764968766554112

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こういったことから「完全なトラストレスは理想論であって、現状、非現実的である」というのが、私の意見です。
もしトラストレスの世界が実現するとしても、人間の意識改革レベルの話も含まれてきますので、最低でも数十年先になると思います。

もし、人々が小難しいことを考えなくても、上手くトラストレスに回る安全なシステムができたら、それこそがビットコインの系譜を継ぐ、世紀の発明だと言えるでしょう。

しかし、現システム上、私を含めた多くの方が取引所を経由してコインを売り買いしており、それはつまり「"信用できる"第三者機関」にコインの手配を依頼していることに他なりません。
BitShares などをはじめとする、人間の手を介さない分散型取引所(DEX)に可能性を見いだすことはできるかもしれませんが、それでもシステム上まだ試用段階だと思われます。

サトシ・ナカモトが論文を発表し、最初のブロックチェーンのブロックが作られた時からまだ10年も経っていないのです。技術も悪意を持ったハッカーも日々進歩しています。ブロックチェーンに関して私は、よく約10年耐えたというのが正直な感想です。
思い出してください。10年前の日本では、mixi, モバゲー、ガラケーの時代だったことを。その10年後、スマホという通話機能がついた小さなパソコンを誰もが持ち歩き、何かあったら Facebook や Instagram に投稿し、隙間時間にガチャを回して一喜一憂する世界を想像できたでしょうか。

ブロックチェーンは現状「事実上改ざん不可」などと言われていますが、進歩した、優れたシステムやプログラムに覆される可能性も将来的にあるかもしれないことを、肝に命じておくべきでしょう。

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以上、私は技術的な話は一切できませんが、トラストレスという考え方は非常に興味深く思っています。
まだ整理できていない部分が多々ありますが、現状の考えを稚拙ながらまとめてみました。

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営業のご経験をもとに"信用”とは何かについて深く考察されていて、大変興味深く拝読しました。

トラストレスを貫こうとすると、今まで金融機関が肩代わりしていた「金融知識の収集」や「資産を守る」ことなどを全て自分が行うこととなります

僕もここが現状のトラストレスなサービスの課題だと思っています。背景にある哲学には共感できるんですが、じゃすべて自己責任ってなると、プロダクトを普及させる上で障壁になりそうだなと。

今のブロックチェーン業界は90年代半ばのネット業界と同じという話もありますし、今後に期待したいですね。

感想寄せてくださり、ありがとうございます!
ブロックチェーンはまだまだこれから、よく聞きますね。革新的な技術なので、私も今後に期待しています。